シリーズ「睡眠障害について」(4)睡眠時無呼吸症候群について

 睡眠に関わる問題として、最近注目を集めている疾患の一つが睡眠時無呼吸症候群、通称SASともいいます。

 2003年にJR山陽新幹線で起きたオーバーランにより社会的に注目されました。SASという病気からくる昼間の眠気症状により、運転手が眠ったまま駅で停止せず走り続けてしまったのです。

 しばらく前の時代までは昼間眠くなると「気持ちがたるんでいるからだ」などその人のやる気の問題として捉えられてきましたが、このニュースによりSASという病気があることが社会的に知られ、現在に至るまでに徐々に認知されてきました。

 動画をご覧ください。これはSASの患者さんで行ったポリソムノグラフィー、略してPSGという睡眠検査の波形です。こちらにありますように、胸とお腹につけたバンドのセンサーの波形は呼吸運動をしているのにもかかわらず、鼻につけた気流のセンターは停止を認めています。この間、1分半程になります。ずっと呼吸が止まってしまうことはないのか、と聞かれることがありますが、そういうことはないと考えられています。何故なら脳の中には二酸化炭素を検知するセンサーがあり、無呼吸により二酸化炭素がたまってくると、もっと呼吸しなさい、と脳、特に脳幹と呼ばれる、人間の生命を維持するための中枢指令センターとも言うべき場所から命令がでてくるからです。こちらの方も呼吸を大きくすることで、呼吸が再開しています。このタイプの無呼吸は閉塞性と呼ばれ、特に仰向けで寝ると舌が下の方に落ち込んで、加えて筋弛緩作用などにより周囲の組織も落ち込んで、空気の通り道をふさいでしまうタイプの無呼吸です。大部分のSASの方はこの閉塞性というタイプに属します。従って無呼吸というのは、呼吸が止まってしまう、というよりかは睡眠中の気道閉塞により酸素の交換が一時停止してしまう、という言い方の方が正確な病態を表していると私は考えています。

 一方、中枢性無呼吸というタイプのSASもあります。これは先ほどの二酸化炭素のセンサーが何らかの理由で鈍ってしまい、呼吸の指令を出すのが遅くなってみられるもので、特に頭の病気や心不全などの病気で出てくることが知られています。また閉塞性のタイプと合併してみられることもあります。これにしても二酸化炭素のセンサーが鈍っているだけで、時間の遅れはありますが、きちんと呼吸の指示は出しています。こちらは、睡眠中の呼吸ドライブの反応性の低下、という言い方が正確と思われます。

 それでは、無呼吸があるとどんなことが起きるのか、どうして昼間眠くなるのか説明します。
 
 無呼吸が起きると、危険な状態ですので、交感神経が働き、人間は半分覚醒に近い状態になります。重症のSASの人はこれが一時間に30回もみられ、多い人では100回もみられます。睡眠しても一分に一回は起きているような状態になると、睡眠の質が低下するのは明らかですね。従って昼間に眠くなります。これについてはCPAPという治療が有効ですので、お近くの医療機関ないし当院外来にご相談ください。また横向きで寝ると無呼吸が出ない方もいます。抱き枕など寝具を工夫することにより横向きで寝られて無呼吸がなくなることが期待されます。試してみることもお勧めされます。

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