睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸と診断をしています。

この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きているときの私たちの活動に様々なリスクを生じさせる可能性があることです。

寝ている間の無呼吸になかなか気付くことができませんので、治療には至らない人を含めると日本には300万人以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者がいると推計されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)はとても身近な疾患です。下記では睡眠時無呼吸症候群(SAS)について詳しくご案内いたします。

  1. いびきについて
  2. なぜ呼吸が止まるのか?
  3. 居眠り運転が5倍に
  4. 脳卒中の発生リスクが3.3倍
  5. 高血圧の発生リスク
  6. 糖尿病の発生リスク
  7. 心疾患の発生リスク

1.いびきについて

いびきをかく人は、約7割居ると言われています。健康上、注意をしなければならないいびきは睡眠時無呼吸症候群に伴ういびきです。

(1)散発性のいびき

普段はいびきをかかないのに、疲れたときやお酒を飲んだときに限っていびきをかくというものです。

(2)散発性のいびき

寝ているときはいつもいびきをかくという場合のものが当てはまりますが、寝ている間の換気量低下(呼吸量が減ること)や覚醒反応(体は眠っていても脳が起きた状態になってしまうこと)の有無によって「単純いびき」と、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴ういびき」に区分されます。

2.なぜ呼吸が止まるのか?

睡眠中に呼吸が止まってしまう原因は大きく分けて2つ「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)」あります。

(1)閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)

上気道に空気が通る十分なスペースがなくなり呼吸が止まってしまうタイプです。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者さんのほとんど(9割程度)がこの閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)に該当します。 上気道のスペースが狭くなる要因は主に肥満です。肥満で上気道のスペースが圧迫されて狭くなり、呼吸がしづらい状態となっているのです。 具体的には首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大のほか、舌根(舌の付け根)沈下、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)沈下などによる喉・上気道の狭窄が挙げられます。 また、仰向けに寝るといびきをかくが、横向きに寝るといびきをかかないという方が居られます。これは仰向けで寝た時に気道が狭くなっている証拠です。睡眠中は筋肉が弛緩します。仰向けに寝る場合は特に舌の付け根(舌根)などが上気道に落ち込みやすくなります。上気道が閉塞してくると狭い隙間を空気が通ろうとするので、「いびき」が生じやすい状態となり、それが更に進んで完全に塞がれてしまうと空気が通る隙間がなくなり、「無呼吸」になるのです。横向きや座って寝てもいびきをかくという場合には要注意です。

中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)
(2)中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)

脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常です。睡眠時無呼吸症候群の中でもこのタイプは少数です。CSAに陥るメカニズムは様々ですが、心臓の機能が低下した方の場合には30-40%の割合で中枢型の無呼吸がみられるとされています。 肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経には異常がないのに、呼吸指令が出ないことにより無呼吸が生じます。OSAと違い、気道には問題がありません。OSAの場合は気道が狭くなって呼吸がしにくくなるため一生懸命呼吸しようと努力しますが、CSAの場合は呼吸しようという努力事態がみられません。

(3) 居眠り運転が5倍に

睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって生じる日中の眠気は、判断力・集中力や作業効率の低下を招きかねません。また眠気ばかりか、睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって日中に居眠りも増加します。 「運転中の眠気」の経験割合は、非SAS患者と比較してSAS患者で4倍(40.9%)、「居眠り運転」ではなんと5倍(28.2%)という調査結果が示されています。
(出所:臨床精神医学1998:27:137-147)

(4) 脳卒中の発生リスクが3.3倍

脳卒中「脳の血管が出血(脳出血)したり、詰まったり(脳梗塞)する病変」は、日本人において癌・心臓病に次ぐ3番目の死亡原因ですが、死に至らない場合でも、後遺症として麻痺や言語障害が生じる病気です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症者は脳卒中の発症リスク(健常者の3.3倍)が高いことが報告されています。
(出所:New England Journal of medicine 2005)

(5) 高血圧の発生リスク

日本高血圧学会の診療ガイドラインでは睡眠時無呼吸症候群(SAS)が二次性高血圧の原因疾患の1つに位置付けられています。 無呼吸状態から呼吸が再開するとき、身体は寝ている状態でも脳は起きた状態になります(覚醒反応)。同時に、睡眠が一時中断状態になり、交感神経が亢進することで血圧が上昇します。本来、寝ている間は副交感神経が優位ですが、閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSAS)はこうした無呼吸・呼吸再開のパターンを繰り返すために交感神経が活性化され、血圧変動が持続してしまうのです。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって生じている高血圧の場合、適切にSASを治療すれば高血圧の改善も望めます。
また、二次性高血圧でない通常の高血圧も睡眠時無呼吸症候群(SAS)により発症リスクが上昇するという報告があります。
(New England Journal of medicine 2000)

(6) 糖尿病の発生リスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)が糖尿病を誘発するメカニズムは明確には解明されていませんが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を増すごとに、糖尿病を合併する割合が上昇していくとされています。
(出所:Am J Respir Crit Catr Med 2005)
原因は、「間欠的低酸素血症(低酸素状態と正常な酸素状態が交互に繰り返される現象)」と、無呼吸状態から呼吸が再開するときの「覚醒反応(脳が覚醒した状態)」が糖代謝の異常と関連すると推測されています。

(7) 心疾患の発生リスク

不整脈(※)の一種である「心房細動」は、「心房」という心臓を構成する部分が異常な電気刺激を受け、十分に収縮できない状態になる心疾患です。 夜間の心房細動の発症リスクについて、重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、SASでない場合に比べて4倍以上であったという報告があります。 (出所:Am J Respir Crit Care Med 2006)

※不整脈とは、脈が不規則になったり、異常に速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)することを指します。 心臓は電気刺激によって全身に血液を送り出すポンプの役目を果たしていますが、刺激伝達経路が何かに障害されて電気刺激が心臓全体に伝わらない、または電気刺激そのものが発生しないと、ポンプとして正常に機能しなくなり不整脈を起こします。